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新しい「おいしさ」を考える

おいしい経済 楠本修二郎 ワニブックス
ISBN:4847071174 発売⽇:2021/12/10 224ページ

「食」に関する話題は日常会話からニュースまで毎日あらゆるところで登場します。
特に最近は野菜の高騰や大手食品メーカーの値上げなどのニュースが相次ぎ、職場でもたまねぎの値段について話したばかりです。
スーパーでは1玉150円くらいでしょうか。
不安な話題ばかりですが、むしろ今こそ「食」を通じて日本が世界をリードするチャンスだと語るのが、今回紹介する『おいしい経済』です。

本書ではまず現在の「食」のファクトや課題を振り返り、続いて目指すべき姿を「おいしい経済」と設定します。
そして、「おいしい経済」を達成するためのヒントが日本の食文化にあふれていることを解説しています。

本書で一番重要だと感じたのは、「おいしさ」の再定義です。
かつて「おいしさ」とは味覚的なすばらしさとしての意味だけを持っていました。
しかし今では、味覚だけでなく「食」の持つ文化的背景、環境負荷、健康への影響などを含めた価値が「おいしさ」であり、かつ多様性をもつものになりました。
この再定義された「おいしさ」を理解し、それを満たすことがこれからの「食」に求められると語られています。
消費者目線でも、自分の考える「おいしさ」を理解したうえで行動することで、より充実した「食」を経験できるのかもしれません。

そして本書では日本の食文化から得られるヒントが紹介されます。
地産地消、里山文化、地理的背景による多様な食文化などが興味を引きました。
もちろん日本の食文化だけが優れているのではなく、むしろ積極的に海外の食文化を取り入れようとする日本らしさもヒントの一つとして挙げられています。

一点気になったのは、本書で紹介された好事例は特定地域での取り組みやスタートアップ企業の取り組みが多く、このままで世界をリードするほどの規模になるのだろうか、という点です。
多様な取り組みが生まれることで規模が大きくなること、あるいは大企業が多様な取り組みに手を出すこと、おそらくその両方が必要なのだと思います。
企業の人間としても消費者としても、できることを考えていきたいと思います。

さて最後に、つい先日ドライブ途中に道の駅の野菜直売所で、6玉入りで350円、1玉あたり約60円のたまねぎを購入しました。
生産地に行くだけでこんなに安く、その地域らしい食品を買うことができて、まさに「おいしい経済」活動ができました。
ただ、車の環境負荷まで考えると、より「おいしく」する余地はあるかもしれません。

おいしい経済 著者: 楠本 修二郎 出版社: ワニブックス
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