紹介する本 | 「自省録」マルクス・アウレーリウス 著、 神谷美恵子 訳、岩波文庫、2007年2月9日 発売 |
読んだ時期 | 2021年8月(読書会でも紹介しました。) |
読んだきっかけ | 以前紹介した『リーダーシップの旅』で引用されていて、今でも共感される2000年前の哲学とは何か気になったため。 |
おすすめ層 | ストア哲学の考えを知りたい方。古代ローマ帝国の歴史に興味がある方。朝起きられない自分を奮い立たせたい方。 |
ここが伝えたい | 皇帝として自らの行動を顧みた言葉が並べられていますが、自分の手柄の言及はありません。よい人生を送るためには、という謙虚な思考にひたすら出会える一冊です。 |
概要
古代ローマ帝国の第16代皇帝、マルクス・アウレリウス・アントニヌス(在位161-180年)が、日々の気づきや自らの戒めをメモに書きためたものを、出版した本です。
アウレリウスは、映画テルマエロマエで存在感のあった皇帝ハドリヌスの2代あとの在位で、五賢帝のひとりと称されます。
あたかも一万年も生きるかのように行動するな.生きているうちに,許されている間に,善き人たれ──ローマ皇帝でストア派の哲人マルクス・アウレーリウス(121-180).多端な公務に東奔西走しつつ,透徹した目で自らを内省した記録は,古来,数知れぬ人々の心の糧となってきた.神谷美恵子の清冽な訳文に,新たな補注を加えた.
出展:岩波書店HP
構成
アウレリウスが日々、紙切れに書き留めていた気づきや思考が、箇条書きにまとまっています。12巻(章)からなり、各巻には50程度の短文が収められています。
もともと個人のメモ書きベースですので、ところどころ破損や出典のわからない記述があるようで、訳者による補足や注釈も充実しています。
おすすめポイント
本書を通じて一番印象に残ったのは「人一人の命は短い。ゆえに自らがコントロールできないこと(=他人)に惑わされて人生を無駄にするな。」というメッセージです。
例えば、以下のような記述に見られます。
- 我々を悩ますのは彼らの行動ではなく、これに対する我々の意見である。その行動をわざわいと考えた君の判断を捨てる決心をせよ。
- 人間はいずれ死ぬものであること、もうしばらくすれば君は灰か骨になってしまい、単なる名前にすぎないか、もしくは名前ですらなくなってしまう。そして名前なんていうものは単なる響き、こだまにすぎない。
このような壮大な人生観についての言及が多いのですが、実は日常ネタもちらほら出てきます。
- 明け方に起きにくいときには、次の思いを念頭に用意しておくがよい。「人間のつとめを果たすために私は起きるのだ。」
- 腋臭や口臭のある人に腹を立てるのはくだらない。「そういうことは人の気に触ることだ」と相手に理性的に働きかけて、諭してやるのだ。
皇帝も人間として身の回りのことに対処しなくてはいけなかったんだな、とクスッと笑えるネタに、親近感を感じてしまいました。ただ、皇帝という地位にありながら、名声や評価を追い求めず、内省を欠かさなかったアウレリウスのスタイルには、背筋が伸びる思いがしました。
HARU