紹介する本 | 「リーダーシップの旅 見えないものを見る」野田智義・金井壽宏 著、光文社新書、2007年2月16日 発売 |
読んだ時期 | 2021年7月 |
読んだきっかけ | なんとなく国内で通えるMBAを探していたところ、野田さんのお名前に行き当たり、著作として紹介されていたので読んでみました。 |
おすすめターゲット層 | リーダーは「すごい人」がなるものだと思っている方。リーダーシップについて理論だけでなく様々な事例や実践経験からも知りたい方。何か新しいことを始めようとしている方。 |
ここが伝えたい | よい組織やよい社会という「見えないもの」を見たいと思って一歩を踏み出す。それだけで既にリーダーシップの旅は始まっているが、なにも歴史に残る偉人だけがリーダーシップの旅を体験するのではない。一人ひとりが人生を歩んでいること、それがリーダーシップの旅になる、という考え方がじわじわと伝わってくる一冊。 |
概要
リーダーシップ教育・社会啓発を目的とした「ISL」というNPO法人代表の野田智義氏と、経営学者の金井壽宏氏の両者が、リーダーシップについて交互に持論や経験を展開していく本です。
社長になろうと思って社長になった人はいても、リーダーになろうと思ってリーダーになった人はいない。リーダーは自らの行動の中で、結果としてリーダーになる。はじめからフォロワーがいるわけではなく、「結果としてリーダーになる」プロセスにおいて、フォロワーが現れる。
リーダーシップは、本を読んで修得するものでも、だれかから教わるものでもない。それは私たち一人一人が、自分の生き方の中に発見するものだ。リーダーシップはだれの前にも広がっている。
何かを見たいという気持ちがあれば、可能性は無限に膨らむ。自らが選択し行動することで、人は結果としてリーダーと呼ばれるのだ。
出典:光文社新書HP
構成
まず、出だしから挑戦的な(?)見出しで、「リーダーシップに興味がわかない皆さんへ」と提起されています。
世の中にリーダーシップを語る本はいっぱいあるし、本当に本を読むだけでリーダーシップなんて分かるのか、と少し懐疑的に思っている場合でも、なんだか出だしから惹きつけられてしまいます。
全5章のうち、どの章も、野田氏と金井氏が交互に書き進めているスタイルです。野田氏のパートでは、ご自身のNPO設立や、過去の研究活動の経験で身に着けた視点や考えが明瞭に書かれています。
それに呼応するように、金井氏のパートではリーダーシップや経営に関する既往研究を引用して、裏付けとなる理論や知見を展開しています。
両者の意見だけではなく、過去・現在の経営者に関するエピソードや、参考となる書籍の紹介が豊富であることも、本書の特徴のひとつです。
特にパウロ・コエーリョによる『アルケミスト』の引用が効果的で、(私自身が大好きな本であることもあいまって、)好感度を持ちながら読み進めました。
私は普段本を読むとき、心に響いたフレーズや文章があると、一旦本を読む手を止めて、その表現をスマホアプリにメモしているのですが、この本に関してはメモするために何度立ち止まったか数え切れません(笑)。
それほど、ぎゅっとエッセンスが詰まった視点や考えが、随所にちりばめられています。
おすすめポイント
特に最後の野田氏によるエピローグでは、「リーダーシップはなにもチームや組織、社会の中だけで発揮されるものではない。各々が人生を歩むこと、納得できるように一歩を踏み出すことでも発揮されている」、と書かれています。
このエピローグに行きつくまで、1ページ1ページ大事に読み進めたからこそ(リーダーシップの旅ならぬ、『読書の旅』を野田氏や金井氏と共に歩んだからこそ)、共感することができ、クライマックスシーンとして心に響きました。
また、本書が出版されたのは2007年ですが、リーダーの例としてカルロス・ゴーン氏や、堀江貴文氏についても触れられています。
現在の私たちや社会が彼らに持つ印象と、当時の書かれ方を比較するのも、面白いと思います。
こぼれ話
せっかくですので、私がメモしたフレーズや文章から一部を紹介します。
- 人についてきてもらったという経験が、リーダーの原動力を利己から利他へと転換させる。
- 三人称のフォロワーによる帰属でもなく、社会による公認でもない、一人称で、自分が「見えないもの」を見たいと頭で考え、心の底から願う気持ち。
もちろんこれら単体でも含蓄がありますが、やはりコンテキストありき、とも思います。
前後の文章との関連があるからこそ、より理解が深まると思うので、本書のどこにこれらの表現があるのか、ぜひ読み進めながら探してみてくださいね。
HARU