紹介する本 | 「戦争と平和1」レフ・ニコラエヴィチ・トルストイ 著望月哲男 訳光文社古典新訳文庫、2020年1月9日 発売 |
読んだ時期 | 2021年1月〜 |
読んだきっかけ | 少し読書に使える時間が増えたときに、久々にトルストイの長編小説の世界にどっぷり浸かりたくなり、トルストイといえば戦争と平和だろうと思って、読み始めました。 |
おすすめターゲット層 | ロシアの文化が知りたい方。例えばアウステルリッツの戦いと聞いて、ぴんとくる方。教科書で学んだだけでない世界史を知りたい方。 |
ここが伝えたい | ナポレオンのロシア遠征にまつわる戦争を主軸として、史実に基づきつつフィクションも交えた作品です。ロマンスあり、旅物語ありで、世界史を知らなくても一つの長編小説として楽しめます。 随所に散りばめられたレトリック、著者の歴史観に関する考察など、知的好奇心をくすぐる要素も盛りだくさんです。 |
概要
ロシアの文豪トルストイの代表作だけあって、様々な訳者や出版社から出されていますが、私は光文社古典新訳文庫の版を読んでいます。
ここでは第1巻の内容について以下、光文社古典新訳文庫のHPから引用します。
始まりは1805年夏、ペテルブルグでの夜会。全ヨーロッパ 秩序の再編を狙う独裁者ナポレオンとの戦争(祖国戦争) の時代を舞台に、ロシア貴族の興亡から大地に生きる農民にいたるまで、国難に立ち向かうロシアの人びとの姿を描いたトルストイの代表作。全6巻。
出展:光文社古典新訳文庫HP
構成
光文社からは、本記事執筆時点の現在(2021年7月)では5巻までが出されています。最終巻の6巻は2021年9月刊行予定ですが、もう待ちきれません。
作品中の登場人物は、ナポレオンやアレクサンドル皇帝を始め、将軍や貴族、商人、職人、農民…など、ゆうに千人は超えるのではないかというほどに及びます。
とはいえ重要登場人物として、例えばピエールやアンドレイという人物に着目していて、彼らの社交や恋愛・結婚の様子、戦争体験、人生への哲学の変遷について、特に詳しく書かれています。
5巻までの時点では挿絵が全くないので、彼らはどんな容貌なのかなと心をときめかせつつ読み進めています(ちなみにわたしはアンドレイのファンです♪)。
おすすめポイント
群像小説という側面だけでなく、遠い過去の世界史の授業で習ったような戦いの名前や地名が入ってくるノンフィクションの要素もあることが、読み続けられ面白さのポイントです。
また、日本の戦争歴史の方が身近な私にとっては、違う国を舞台にした戦争の様子にも面白さを感じました。ロシアはヨーロッパとは文化が違うとはいえ、社交界ではフランス語が話されており、軍にはロシア人だけでなくポーランド人やオーストリア人など、様々な文化、言語を操る人々が所属しています。彼らが共に戦う場面では、言語が違うことによる意思疎通の難しさのエピソードも書かれていて、勉強になります。
さらに、著者トルストイの戦争観、歴史観に関する論説も随所に挟まれていますが、特に4巻に掲載されている文章が秀逸だなと感じます。
ただ、最終巻6巻ではそれを超える論説が展開される、と5巻の解説に書いてあり、どんな内容なのだろうとわくわくします。
こぼれ話
長編小説には主要人物紹介として系図がつきものですが、のみならず、旅物語には欠かせない地図も添えられています。
しかも、ファンタジーとは違い実際の地理に基づいていることが「そそられポイント」。その地図に両軍(ナポレオン率いるフランス軍と、ロシア軍)の動きが矢印で丁寧に書いてあるので、一通り読んだ後に地図を眺めながら、ストーリーを思い返して読後の思い出に浸ることができます(笑)
ただ、系図についてはしおりに印刷されている体裁であるようで、図書館で借りると往々にして抜き取られて(?)しまっているのが残念です…。
HARU